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医療法人にはどのような種類がありますか?

医療法人には大きく分けて医療法人社団と医療法人財団があります。ほとんどの医療法人は医療法人社団にあたります。また、医療法人社団には出資持分があるものとないものがありますが、現在の医療法のもとで新規設立する医療法人は出資持分がないもののみ許容されています。このほか、特殊な類型として社会医療法人や特定医療法人があります。

1.医療法人とは何か
医療法人とは、①病院、②医師・歯科医師が常時勤務する診療所、③介護老人保健施設のいずれかを開設することを目的として医療法に基づき設立される法人をいいます。医師や歯科医師が開業する場合、クリニックを医療法人とするのではなく個人経営とする選択肢もありますが、あえて医療法人を選択することのメリットとしては、主に節税面と複数事業所の経営ができる点にあるといわれています。
節税に関しては、医療法人であれば医師又は歯科医師の報酬は法人からの給与として支払われることになりますので給与所得としての控除が受けられます。また、クリニックの収益次第ではありますが、医療法人に課税される税金の最高税率は個人に課税されるものより低いため一定以上の収益のあるクリニックについては医療法人化することにより大きな節税効果が期待できます。
もっとも、医療法人とした場合には社会保険加入義務が生じるため、税額が減少する以上に社会保険料負担が増大することがあります。したがって、経済的理由で医療法人化を検討する際には、税理士や社労士等の専門家にどの程度の経済的メリットが見込めるかのシミュレーションを依頼することをおすすめします。
これに加え、医療法人を設立することにより分院など複数のクリニックを経営することができるようになります。したがって、事業の拡大を目指す場合には医療法人化が検討されることになります。

2.医療法人の種類
(1)医療法人社団と医療法人財団
医療法人には、大きく分けて医療法人社団と医療法人財団の2種類があります。医療法人社団とは人を基盤として構成する医療法人であり、医療法人財団とは個人や法人が無償で寄附した財産を基盤として構成する医療法人です。平成22年(2010年)3月末現在の調査によれば、全医療法人の99.1%が医療法人社団であり、多くの医療法人は医療法人社団となっています。
クリニックを医療法人とするためには、医療法人として業務上必要な設備等を保有していることが前提となります。医療法人社団を設立する場合は医療法人の最高意思決定機関の一員である社員及びその社員による資産等の拠出に基づいて定款を作成します。他方、医療法人財団を設立する場合は寄附された財産に基づき、医療法人社団の定款に相当する寄附行為を作成します。
医療法人を設立する際には、株式会社などと同様に法人登記が必要となります。これに加えて、医療法人特有の手続として、医療法人の主たる事務所所在地の都道府県知事の認可を受けることも求められます。したがって、医療法人の設立手続に関してはある程度の専門性が要求されますので、早めに医療法人に詳しい専門家に相談しておくことが望まれます。

(2)医療法人社団の類型
医療法人社団については、さらに出資持分のある医療法人と出資持分のない医療法人に分類することができます。
このうち出資持分のある医療法人とは、定款において出資持分に関する定めを設けているものをいいます。平成19年(2007年)施行の改正医療法により、出資持分のある医療法人は新規設立ができなくなりました。法改正前にすでに設立されていた出資持分のある医療法人は、経過措置型医療法人として当面存続する扱いとされています。
出資持分のある医療法人の中には、出資額限度法人という類型があります。出資額限度法人とは、医療法人を設立する際に作成する定款の中に、社員による出資持分の払い戻しや医療法人解散時の残余財産分配に関して、その範囲を払込出資額に限定する旨を定めているものです。
他方、出資持分のない医療法人とは、定款において出資持分に関する定めを設けていないものをいいます。平成19年(2007年)施行の医療法改正後に新規設立する医療法人社団は、出資持分のない医療法人となります。医療法人に出資持分がないということは、医療法人の設立時にクリニックの院長などが出資した資金等は、医療法人が解散する際に出資者に返してもらうことができず国や地方公共団体に帰属することを意味します。
ただし、出資持分のない医療法人の中には、基金制度を採用した医療法人という類型があります。これは、医療法人の運営のための資金調達手段として基金の制度を採用しているものであり、平成19年(2007年)改正の医療法により新たに導入された医療法人の類型です。基金制度を採用した医療法人であれば、医療法人に拠出した基金の返還を受けることができます。

(3)その他の特殊な医療法人
医療法人社団や医療法人財団のほかに特殊な医療法人として、医療法に基づく社会医療法人と租税特別措置法に基づく特定医療法人があります。なお、かつては社会医療法人に類似したものとして特別医療法人という類型がありましたが、平成24年(2012年)3月31日をもって廃止されています。
社会医療法人とは、公共性の高い医療の担い手として都道府県知事から認定を受けた医療法人です。公共性の高い医療として想定されているのは、休日診療・夜間診療等の救急医療、重症難病患者への継続的な医療、感染症患者への医療、災害医療などであり、地域の医療提供体制を維持するために採算度外視で取り組まなければならない医療をいいます。
社会医療法人は、役員や社員について親族の選任が制限されるなど経営における自由度は低くなっています。その一方、税制上の優遇措置を受けることができるなどのメリットもあります。また、社会医療法人は病院等の運営資金を獲得するために通常の医療法人にはできない収益事業を行うことが許容されています。
他方、特定医療法人とは、医療法人財団又は出資持分のない医療法人社団のうち、その事業が医療の普及及び向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与し、かつ公的に運営されているとして、国税庁長官の承認を受けた医療法人であり、租税特別措置法に基づくものです。
特定医療法人として承認を受けることのできる要件としては以下のようなものがあります。このほか、病床数などの要件もあります。

・理事、監事、評議員その他これらの者に準ずるもの(役員等)のそれぞれに占める親族等の割合がいずれも3分の1以下であること
・社会保険診療等に係る収入金額(公的な健康診査、予防接種、助産、介護保険法の規定に係る収入を含む)の合計額が全収入の8割を超えること
・自費患者に対し請求する金額は、社会保険診療報酬と同一の基準により計算されること
・医療診療収入は、医師、看護師等の給与、医療提供に要する費用等患者のために直接必要な経費の額に100分の150を乗じた額の範囲内であること
・役職員一人につき年間の給与総額が、3600万円を超えないこと

特定医療法人として承認を受けた場合には税制上の優遇措置が適用されます。ただし、社会医療法人と異なり収益事業を行うことはできません。

3.おわりに
医療法人を設立することにより節税など多くのメリットを享受できる一方で、医療法に基づくさまざまな規制の対象となります。また、個人経営では必要なかった事業報告書や理事会議事録の作成など管理上の手間も増大します。したがって、医療法人の設立を検討する際には、個々のクリニックの事情に応じて法人化すべきか、またどのような類型の医療法人とすべきかを判断することが重要となります。

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