1. HOME
  2. ブログ
  3. 都道府県医療会計支援センター
  4. 東京都医療会計支援センター
  5. 新宿ミライナ医療会計支援センター
  6. 医院開業スタッフがすぐ辞めてしまった6つの理由

BLOG

新宿ミライナ医療会計支援センター

医院開業スタッフがすぐ辞めてしまった6つの理由

医院の新規開業時に採用した開業スタッフが開業1年で全員が入れ替わってしまった、という話をよく耳にします。

開業時の苦楽をともにし、長年にわたって勤務を続けてくれる開業スタッフは院長にとって誰より心強い味方になります。院長の診療が良くても、あまりにスタッフの入れ代わりが激しいと患者さんは心配になりがちです。

そんな事態を避けるために早期退職につながる6つの理由とその防止策を解説します。

雇われていた立場から経営者へ。スタッフを雇用するということは信頼関係を築くこと。

開業スタッフがすぐに辞めてしまう最も多い理由は人間関係によるものです。具体的には院長が無意識的にスタッフとのコミュニケーションを軽視していたり、院長とスタッフ間の意識の温度差から生じる意見の相違や不満の蓄積が、「退職」という選択をしてしまう動機になります。

勤務医時代は他のスタッフとのコミュニケーションをあまり重要視してこなかったという先生ほど苦労されているようです。辞めてしまった後で人材を募集し、研修することは思っている以上にお金も労力も必要なことです、ちょっとした声がけや心遣いで早期退職を防げることもありますので参考にいただければ幸いです。

理由1 そもそも院長がスタッフを雇用することに慣れていない

院長としてクリニックを開業する際、病院で雇われていた立場から経営者になるパターンがほとんどです。それまで経験のない、会社組織のトップの立場としてリーダーシップやスタッフを纏めるマネジメント能力、さらには人を雇う上で労務の知識も不可欠です。これらが欠けたまま開業をしてしまうとスタッフからの信頼を得られないだけでなく、院長とスタッフあるいはスタッフ間でのトラブルが起き、最悪な結末としてせっかく苦労して開業させたクリニックの評判を落とすことにも繋がってしまいます。

「自分は診療に集中していればいいんだ」という考えの院長や、おそらく先に開業した方から聞いたのでしょう「オープニングのスタッフはどうせすぐに辞めちゃうんでしょ?」とお話しされる開業前の院長もいました。どちらの院長もスタッフとのコミュニケーションを疎かにした結果、開業後半年も経たずに「本当にスタッフ全員が退職願を持ってきた…。今後どうやって運営をしていけばいいんだ。困った。」という事態が起こってしまいました。いい加減な態度でスタッフと接していると、すぐに見切りをつけられかねません。他の病院での勤務経験があるスタッフは、比較をして以前の病院よりも職場環境が良くないと思えばすぐに辞めるのも当然でしょう。

 開業前に経営の経験を積むことは難しいので、どうしても開業後試行錯誤することになりますがコンサルタントやクリニックを開業した知り合いなどから情報を集め、自分にどういった知識・心構えが必要になるか知っておくことも重要です。

理由2 院長の目標・理念をスタッフと共有していない

患者さんからの評判もよく、オープニングスタッフの離職率が低い医院では、開業前の最初の研修時に現実的な実務研修だけでなく院長から開業上での目標や理念をスタッフに伝えていることが多いです。院長がどんな理念をもってクリニックを開業したのか、クリニックの目指すものをスタッフに理解してもらいます。これは開業に向けてスタッフのモチベーションを上げる効果と、1つのチームとしての結束力を強固にすることが目的です。

院長と同様に、受付担当をはじめとしたスタッフは患者さんと接する機会が多いので、その評判が直接医院の評判を左右します。スタッフが高いモチベーションを維持し、やりがいを感じながら働くことは、医院の安定的な継続・発展に欠かすことはできないでしょう。

ただし自身の理念を伝えることで気をつけたいことは「院長の言っていることがコロコロ変わる」と思われてしまうことです。どんなに素晴らしく聞こえのいい理念でも朝令暮改では薄っぺらく感じてしまい、スタッフから尊敬される院長になるのは難しいでしょう。

理由3 スタッフ間の人間関係が悪い

少人数で運営されるクリニックは濃密な人間関係が形成されやすくなります。もちろん同じ理念や目標を持っていれば強固な組織がなりますが、一部のスタッフの不満や問題行動ひとつで組織が脆く崩れるということも肝に銘じておかなければなりません。

院長が診療に集中するあまりコミュニケーション不足が生じ、現場でのトラブルや問題スタッフの存在に気づかなかった。こういった状況を作らないためにも普段からスタッフとコミュニケーションや面談の機会を設け、些細なことでも院長と話をしやすい職場作りをすることで問題の早期発見・早期解決も容易になります。

またスタッフ間の人間関係で問題が発生し改善策を検討する際のアドバイスとして、院長のトップダウンで行うのではなくできるだけ他のスタッフを巻き込んで改善を進めるとより良好な職場環境ができやすいです。

開業後も全員参加のミーティングや個別の面談を適度に行い、業務上や人間関係上の問題を早期に発見し解決に向けた取り組みを実行しましょう。また普段の何気ないコミュニケーションが相談・報告をしやすい職場の空気づくりを促進します。

スタッフが働く上で必要なシステムとルールを決めていない、またはシステムとルールを経営側が守っていない。

スタッフを雇用する上で必要なのが、業務を実行するためのシステムとルールです。具体的には業務の分担・マニュアル、そして就業規則や昇給のルール等です。スタッフのモチベーションが高い開業まもなくの頃ですと「スタッフ同士助け合う」「他のスタッフの業務をカバーする」「多少の不満はあるが我慢する」等で許容される場合があります。しかし問題が起きないことを理由にシステムやルールを曖昧なまま放置しておくと、スタッフの不満は仕事に慣れた頃に爆発します。そんな事態は避けたいものです。

理由4 業務のシステム化をしていない

業務のシステム化は作業効率をあげるだけでなく、診療サービスの均一化をすることができます。開業前に診察パターンのシミュレーションを重ねてマニュアル・業務分担を決めましょう。しかし開業前に決めたマニュアルや作業分担を開業後に実践してみると円滑に進まなかったり、誰かひとりの負担が大きくなってしまう、ということがあります。対処の方法としてシステムや分担を決める段階で、開業後柔軟に変更ができるような余地を残しておきましょう。

システムの改善には経営側のトップダウンではなくスタッフ同士が日々の話し合いの中でブラッシュアップができるようにすることが仕事のやりがいに繋がります。これらのマニュアルは口伝だけではどうしても「言った」「言わない」は発生するので、文書で保存することも大切です。

またクリニックの受付事務経験者を採用してマニュアルを渡して業務を任せたが、すぐに辞めてしまった、という話も聞いたことがあります。この辞めたスタッフと後々話をする機会があったのですが「マニュアルを渡されただけでしたので、その対応が冷たく感じた」といっていました。スタッフ全体を見るのではなく各スタッフに合った研修を行うことも心掛けましょう。

理由5 就業規則がない、労働条件について同意を得てない

スタッフが10人以上いる事業場では所轄の労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。また10人に満たない場合でも労使間のトラブルを避ける意味でも就業規則を作成するのが望ましいでしょう。作成にあたり、社会保険労務士やコンサルタントのような専門家に相談することも重要です。最近では雇われている側の労務知識が向上しており、少しでも疑問に思うことはインターネットを使って簡単に調べることができます。診療で忙しい院長よりもスタッフの方が正しいことを詳しく知っていると思っておいたほうが良いでしょう。

また想定していなかった時間外労働が発生してしまいサービス残業をさせたり、休暇取得を申し出ても業務が回らなくなるからと拒んだりするケースも実際に聞いたことがあります。これには「私は休みも取らず朝から夜遅くまで仕事しているのだから、スタッフも同様にがんばってくれるだろう」という院長とスタッフの温度差や院長の思い違いがあります。仕方がない状況に納得してくれる人は稀で、大抵の人なら嫌気が差して退職してしまいます。ギリギリの人数で回さなければならない開業直後の休日の取得や残業については採用前に対処方法やルールを決めておくことが大切です。労働条件についての食い違いは、経営側に悪気がなくても、スタッフからすると職場に不満や不信感をもつようになり、その結果退職の原因にもなります。このような食い違いは是非とも避けたいところです。

理由6 昇給のルールが曖昧、明文化していない

昇給は経営者の裁量できめられるもので、必ずしも義務化されるものではありません。しかしスタッフの働くモチベーションのひとつになるものですから、昇給要件(スキル・新人教育ができるか・勤務年数・勤務態度など)を明確にして就業規則や雇用契約書で定めておきましょう。これにより給与面を理由とした離職が減ったというクリニックも多くあります。

最後に

ちょっとした配慮やルール決めでスタッフの早期退職は防げることが多いのです。院長の医療理念や経営方針を理解し医院運営をしてくれるスタッフを確保することは、医院経営における重要な課題です。ですが、はじめから理想的な経営者としての手腕を振れる院長は極々限られます。大多数の院長が試行錯誤の日々を乗り越え医院運営を行っていることを肝に銘じましょう。